リュウグウノツカイのように

深海で悠々と暮らしたい

教科書の「電子書籍化」について思うこと

まえがき

 小学生が自ら考えた、おさんぽなランドセルが話題となっている中で「教科書を電子書籍化できればいいのでは?」という意見を見ました。新型コロナウイルスが流行し、急激にITの波が襲う学校現場。卒業した身とはいえ、実際に授業をリモートで受け、電子書籍で学んだ身としての意見を、まとめてみました。

1人1台のタブレット端末+家のネット回線 は常識!?

 小学生のお子さまを持つ知り合いから、「ITに詳しそうだから」ということで、たまに相談に乗ります。違う、そうじゃないんです。でも相談に乗ります。昔からお世話になっているので...。

 びっくりしたのは、「学校からネット回線を引いてくれって言われて・・・どうするの?」という相談。学校からそんな提言されるんですね・・・。特別な事情のときはモバイルWi-Fi自治体で貸し出すんだとか。リモートの授業の準備、ピカピカの1年生から考えているのでしょうか?

 タブレット端末は今のところ、お持ち帰りせず学校預かりだそうですが、ゆくゆくはお持ち帰りするそうです。早い自治体では、すでにランドセル内にタブレット端末が入っていそうですな。

GIGAの波がキている?

 現在、国は「GIGAスクール構想」という、なんだか強そうな構想をしています。よく「小学生もプログラミングの時代か~」という話題がありますが、それも、この構想の1つなんです。 benesse.jp

 私の住んでいる街でも、公民館や図書館などにWi-Fiが設置されるようになりました。ただ、政令指定都市のような大きな街よりも、風情ある人数が少ない町のほうが進んでいます。あくまで、私の感覚です。

GIGAは何を変えたいの?

構想について調べていたら、2つのキーワードが出てきました。

  • 一斉教育から個別最適な教育
  • 一方向から双方向

 おそらく、多様性を吸収し、アクティブラーニングをさせたいんだと思います。でも、タブレット端末を配布して、学校や家庭でインターネットに繋げる環境を用意しただけでは、これらのキーワードは解決しません。というか、専門学校って似たような環境で勉強しています。多様性ある学生から、レベル差を吸収し、未来ある将来へと向かっていけるのは「教育の仕組み」「講師の熱意」「学生の本気さ」だと思うんです。決して、PCを使った授業が多いからではないはずです。ネットを使わなくても、現地に行き空気感を楽しむ「メタ認知」が大事だと思うんです。GIGAさんは、そこんところ、どのようにお考えなのでしょうか?

GIGAスクール構想はインフラ事業では?

 形から入る人もいます。道具を揃えれば、一流プレイヤー。なんでも出来そうな気がします。でも大事なのはその後。練習や経験を積んでいくことで、本当の一流になっていくんです。GIGAさんの話を見ていると、なんだか日本って「インフラ通せば、なんとかなる~」って考えている風潮があるな~と思ってしまいました。確かに、道路や鉄道網が新たに完成すれば、周辺は活気づき、経済が回るでしょう。使ってくれればですが。政治批判する気はないです。でも、作ったあとのことを考えもせず、周囲に丸投げスタイルは、新たなインフラを作る上ではお家芸なのかもしれません。

インフラの例

ITやAIは魔法ではない。

 さらに調べを進めると、どうやらGIGAさんを進めることによって「双方向授業」や「AIドリル」なるものが生まれるらしい。誰が生むんでしょうか?プログラミングやゲームを学んだ身として、よく勘違いなさっておられるな~と思うのは、ITは魔法のように全てを解決できること。もっというと、ITは人間ではないと考えていること。ITの裏側に人間の姿が分からない(見えない/見たくない/見ようとしない)んだと思います。人間が苦労して生んでいるんですから、魔法のようにパッと出てきません。私達、ITエンジニアが苦労して生んでいるんです。たとえ魔法使いだって、もっと苦労していると思います~。

GIGAスクール構想は教員不足の切り札?!

 オンラインで授業を受けていて、双方向授業で出来そうなこと、思い出します。

  • 自分の意見を、教員にチャットなどで直接伝えられる
  • クイズ番組のように選択肢を答え、授業に楽しく参加できる
  • 課題をデータとして提出しやすい
  • どの席でも黒板/ホワイトボードが見やすい
  • 周囲の席や受講環境を気にせず、好きなところで授業を受けられる
  • 大人数でも教員1人でも授業ができる
  • 授業を記録化できる(スクリーンショット/録画)

 上の方は良いと思います。双方向ならではの、学生も参加できる楽しい授業っぽくて。でも、下に行くに連れ、双方向って言えるんでしょうか?というモノも考えられてしまいます。放送大学っぽい。

 特に気になるのは、下2つ。教員不足が叫ばれれている現在、もしかすると「スーパーめっちゃわかりやす~い先生」みたいな人の授業を録画し、それを全国で同学年が同時視聴。生身の教員は個々の学生のサポートにあたる、みたいな世界線になるのかもしれません。そうすれば「個別最適」もできそうですし、教材の量もたまります。実際、企業研修はすでに映像化されているモノを視聴するカタチが多いですから。

2秒のロスタイム

 たかが2秒、されど2秒。実はプログラミングの教科書を電子書籍で学んでいました。専門学校って教科書は授業担当講師の自由らしいんです。指定された電子書籍を購入しました。理由は「カバンが重くなるから」と「机に教科書を置くスペースがないから」。専門学校の机、ノートPCとノートを置くから狭いんです。いつでもPCに入っていますから、軽いし拡大できるしコピペもできるし最高だなぁと思っていたんです。でも、やっぱり紙の書籍の方がいいなぁと思うことがあります。

 まず、教科書を開くまでの時間です。電子書籍なら、がんばっても2秒かかります。人間って不思議な生き物で、たった2秒でも「遅いなぁ」と思ってしまうんです。最悪やる気を削ぎます。教科書なら1秒で手に取れます。目次を見たり、すぐ行動に移せます。電子書籍ならではの「何もできない2秒」に小学生は耐えられるんでしょうか。ちなみに2秒も体感です。

なんとなく見れる多幸感

 また、紙ならではのアナログな感触。パラパラとめくったときの新たな出会いなんかは、よく辞書や図鑑などの意見でも見受けられます。最近は動画で辞書や図鑑の説明が見られるそうで、すごい時代です。ここで大事なのは俯瞰できること。ピンポイントではなく、なんとなく全体を眺められることです。これはデジタルが弱い部分。ピンポイントで提供できるが故、広く浅くは苦手な部分かもしれません。今晩のおかずを探すとき、「ハンバーグ 簡単」とピンポイントで探すよりも「夕飯 おかず 人気」で探したほうが、新たな出会いがあるってもんですよ。

cookpad.com

小中学校もシラバスを配布したら?

 電子書籍化で授業を受けた身としては、正直、優劣つけがたいところ。でも、年々増えていく教科書の量をニュースで見聞きするたびに「この時期に全員が学ぶべきなのか?」と思うこともあります。学習指導要領という、専門学校で言えば「シラバス(=授業の流れ)」は見直されているんでしょうか?と思ってしまいます。

 そもそも「教育を受けさせる義務」の割には、教育の内容を知らない人が多いんじゃないでしょうか。私も知りませんし。私は授業の前にもらいましたよ。シラバス。小中学校も、シラバスを配布したら良いのではないでしょうか。

教科書の電子化で解決せず、教育内容を無駄に詰め込まず最適化する動きを切に願っています。