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「教えられない教員」について思うこと

まえがき

 専門学校に通っていた頃、なんとなく気づいてしまったことがあります。「教えられる」先生と、「教えられない」先生。授業を受けると、似たような言語なのに、こんなにも違うのか・・・と思ってしまいます。両者とも「先生」と言われる職業なのに、なぜ違うのか。特に「教えられない」先生について、なぜそうなってしまったのか、勝手に想像します。

技術不足のため

 専門学校の教員というのは、最先端かつ深い知識を持っていそうなイメージですが、そうでもありません。試しに自分の学校の「教員募集」のページなんかを見てみると、「エッそのレベルで募集するの!?」と思うこともしばしば。だって教員不足なんですもの。応募のハードルは下げたほうが良いです。HighからLowまで網にかかります。そんなこんなで技術が無くても、熱意と話術で教員の座を勝ち取ったんだと思います。

 話術はともかく、熱意は大事です。指導熱心な先生になりますから。でも、いくら指導熱心でも、技術が無いのに教えるというのは辛いこと。特にIT系・ゲーム系は「システムエンジニアプログラマ経験がある」が教員募集のキーワードなので、インフラ系もWeb系もアプリ系もゲーム系も、み~んな同じ括り。そのため、Webエンジニアにゲームプログラミングを教えさせたり、アプリ系エンジニアにネットワークを弄らせたり。完全に雇用のミスマッチが起こっています。特に田舎では。専門外を教えることになった先生も、また被害者なのかもしれません。

他で学べる機会が多くなったため

 IT系・ゲーム系の学習は、必ず専門学校で学ぶ必要がなくなった時代。分かりやすい書籍、無料で学べるWebサイト、親切なSNSの皆さん。教えてくれる人は、学校以外にもたくさん、いらっしゃるんです。そんな親切に頼ってラクをしている可能性も、ゼロではありません。「もっと教えるのが上手な人に教えてもらえばいいじゃないか」。いやいや、あなた先生ですよね?プライドとかお持ちにならないのでしょうか?拗ねているのか捻くれているのか分かりませんが、職務放棄せず教える仕事を全うとしてほしいです。

調べれば解決できるため

 インターネットの普及は、専門知識を手軽に得られるいい時代となりました。一方で、初心者は間違った専門知識に気づけないこともあります。また、インターネットは正しいことしか掲載されないと思う学生もまだいます。優秀な学生は、学校の授業よりも自分で勉強し、先へ先へ進もうとします。壁にぶち当たって、先生に質問します。そこで言われる言葉ランキング1位は「それ、調べてみればいいじゃない?」。失礼ですが、既に調べているんです。単に知らないのか、時間がないからあしらわれるのか分かりませんが、あまりにも冷たい回答です。

 もちろん仕事では「コレについて知りたい。ココまで分かっている。コの部分が分からない」と具体的に質問すべきです。ただ、ここは学校で、学び舎です。まだ仕事モード全開ではなく、ヒヨッコがヒヨヒヨいる状態。質問の仕方を教えてあげたり、上手く学生の質問を汲み取るのも指導の一環ではないでしょうか?学生が優秀だからって、何でも自己解決できるわけ無いんですよ?

都合の良いアクティブ・ラーニングの考え方

 アクティブ・ラーニングとは、学生が自ら学ぶべきことを考え、調査し、成果を発表するような授業スタイル。2020年ぐらいから流行し、専門学校でもHPやパンフレットを見ると大々的にアピールしています。世はまさに大・アクティブ・ラーニング時代。

 アクティブ・ラーニングは学生が主体の学習方法。先生は暖かく見守るメンター的立ち位置です。つまり「合法的に教えなくても良い」というふうにも捉えられます。更に学生が自ら考え調べるので、先生の専門知識は無くてもOK。「最先端の授業をしている」と伝えられますし、色々な事情で「教えられない」先生にとっては、ラクそのもの。都会よりも田舎で流行っているのは、そういった裏事情があるのかもしれません。

釣った魚に餌をくれ

 名称は何であれ、学校で勤務している以上、人に教える仕事に就いている以上、教えるという責任が発生します。学生は学校に通い「先生の授業」を聞きたいんです。「学校に通う」のは目的ではありません。最近は教科書を買っても使わなかったり、そもそも授業は自習みたいなモノも増えつつあります。

 学校の「教える」以外の仕事は大変かもしれません。ですから、ある意味では先生も被害者。誰がこの状況を作っているのか分かりませんが、少なくとも現在の学生募集主義で利益主義なスタイルで、釣った魚に餌をやらない学校は、いくら見た目を派手にキレイにしても、評判は落ちます。

 田舎の専門学校がよく謳う「長年、地元で愛されて」というフレーズ。愛されているのか、単に時間が経過しただけなのか分かりませんが、就職活動や入社してから「あれ?○○専門学校の卒業なのに、コレ習わなったの!?」と驚かれます。とはいえ、企業も計画採用をしなくてはいけませんし、毎年採用をしているので急にストップするのも印象が悪い。ただ、地方のIT企業もU・I・Jターンを狙って首都圏から採用をかけつつあります。さらに良い学生を取りたいんです。まさか...考えたくは無いですが・・・地元を諦めたのかもしれません。

教えるフリをするだけの仕事、じわじわと確実に跳ね返ります。